フランス菓子の歴史
世界中で愛されているフランスのお菓子。実は国内だけで培われてきたものでは無く、近隣諸国と交流することで発展していきました。フランスと他国の交流の歴史において、重要な出来事のひとつが婚姻。他国からフランスへ嫁いだ妃が、自国と同じ生活や食事ができるようにするために、侍女や家具だけでなく料理人やパティシエも同行させました。婚姻によって妃の国のお菓子がフランスに持ち込まれたことでおいしさが伝わり、次第にフランス国内に広まっていったのです。広まったお菓子はフランス風にアレンジされて進化を遂げ、フランス国内のみならず世界的な人気を誇る、現在のフランスのお菓子に至ったのです。
その一例が、16世紀にアンリ2世と結婚したカトリーヌ・ド・メディシスで、彼女は故郷のイタリアからパティシエも連れてきてさまざまなお菓子を紹介しました。カトリーヌが嫁いだことにより、ビスキュイやマカロンといったお菓子や砂糖菓子の技術がフランスにが伝えられ、徐々にフランス人好みの味へとアレンジされていきました。
中世時代のフランスは砂糖が大変な貴重品でした。そのため小麦粉の収穫が多いときやお祭りのときにだけ、パン職人が特別にお菓子を作っていました。その一方で、中世の修道院や教会は非常に強い権力を持っており、その土地の領主の役割も果たしていました。そのため当時の修道院や教会は、農民から小麦などの穀物やはちみつ、卵、バター、チーズなどが納められていました。中世の修道院や教会の多くは一般の家庭には無いオーブンを持っていたため、お菓子を焼くことが出来たといわれています。作ったお菓子はキリスト教のミサで用いられたり、大きな祭日の時には一般の人々にも配られたりしていました。必要な材料と道具が揃っていたからこそ、修道院や教会でお菓子を作ることができ、現在のフランス菓子の多くが修道院や教会発祥となっています。
一般の人々もお菓子を食べられるようになったきっかけは、フランス革命でした。フランス革命はフランスの政治体制を変化させただけでなく、食文化にも影響を与えました。フランス革命により王族が失脚したためパティシエは職を失いましたが、そのパティシエたちがお菓子を売る店を街中に開店させました。当時のお菓子は非常に貴重でしたが、こうして少しずつお菓子が人々の間でも知られていきました。
フランス菓子の魅力
フランス菓子の魅力はキラキラとした美しい輝き。フランスの菓子職人たちはお菓子の見た目へのこだわりが強く、様々な工夫をしています。焼きたてのお菓子にシロップを塗り輝かせたり、チョコレートを乳化させる過程でも、美しく輝きのある仕上がりになったかどうかをチェックします。美しくカットしたフルーツをみずみずしい状態で保つ事や、果汁が滴るような輝きを出すことを目的に、フルーツに透明な艶出し透明な艶出しを塗る工程もあります。このように一つ一つ工程を丁寧に完成させていく事で、美味しいだけでなく見た目にも美しいお菓子が出来上がります。材料の組み合わせから、焼き上げ、そして仕上げに至るまで、多くの手間暇をかけてフランス菓子は一つずつショーケースに並んでいきます。作り手であるパティシエはもちろん、美味しさを求めてくるお客様も、手間暇かけた手作業によって生まれるその美味しさと見た目の美しさに、魅力を感じていただいているのだと思います。
歴史や魅力を知ることによって、フランス菓子はもっと味わい深くなると考えています。世界中の人々を虜にするフランスのお菓子は、他国との交流からもたらされたり、修道院や教会から発祥しているという歴史があります。時代を経て進化を遂げ、今では世界中の人々を魅了し続けています。そんなフランスのお菓子の魅力と歴史を知れば、より味わいが深まります。
日本においてもフランス菓子は、日常生活だけでなく特別な日にも欠かせないものとなっています。パティシエが手間暇かけて丹精込めて作り上げたお菓子たちは、その彩りを目で楽しむのはもちろん、口に含めば幸せな気持ちが広がっていきます。フランス菓子はまさに身近で手軽に買える、最高の癒やし。幸せを感じるひと時を、フランス菓子と一緒に過ごしてみてはいかがでしょうか。